研究概要 |
高齢者の寝たきり要因の第3位は転倒・骨折である.大腿骨頸部骨折は,その90%が転倒によって発生する最も重篤な骨折の1つであり,いちじるしく日常生活動作(Activity of Daily Living :ADL)を低下させる要因である.高齢者のADL, QOLを維持,向上させるためには,転倒の予防,すなわち下肢柔軟性,歩行能力・下肢筋力の向上が有効である.そのため地方自治体や高齢者施設などでは,高齢者の転倒予防のために転倒予防教室を開催し,運動指導などを実施している,しかし,その評価方法には科学的根拠が乏しいこと,評価が簡便に行えないという問題が存在する.申請者らは足爪異常などから下肢柔軟性,歩行能力,下肢筋力が低下し,転倒リスクが増大する可能性に着目した.そこで本研究では下肢柔軟性,歩行能力,下肢筋力における新たな評価指標の提案を行う,下肢機能に関係する8つの計測項目の計測結果より高齢者の理解を補助するため,また運動指導者の運動指導方法を支援するため,主成分分析を用いて下肢柔軟性,歩行能力,下肢筋力の3つのパラメータに要約することを目的とする.対象者は特別養護老人ホームに住む高齢者10名とし,年齢が73〜96歳である.実験方法は最大一歩幅,ゴニオメータ等を用いた前足部可動域,ビデオ撮影による動画像解析,足指間圧力の評価を行った.主成分分析の結果は第3主成分まで得られ,第1主成分の計測項目は,足関節動作範囲,足指外転距離,最大一歩幅の3項目が挙げられた.第2主成分の計測項目は,歩行バランス値,大転子の変動量,膝関節の上昇値であった.第3主成分の計測項目は,足指屈曲角度,足指間圧力であった.主成分分析の結果では,本研究が計測した計測項目が(1)下肢柔軟性,(2)歩行能力,(3)下肢筋力,のパラメータにあてはまり,3つの特徴が要約された,このことは,健康推進のための戦略的プログラムの研究の一部であり,大規模な研究事業を実施する前の基盤データを提供するものであると考える.
|