研究概要 |
本研究では,児童生徒の「生きる力」を育む一環として,ストレスマネジメントプログラムを用いた心理学的介入を行うことを試みた。対象は,小学生,中学生,および高校生であり,原則としてクラス単位を基盤として,集団を対象とした介入を行った。小学生を対象とした介入では,ABC理論に関する心理教育を行った。小学生に対して,イラスト,および教員によるロールプレイングを提示し,場面の解釈の仕方,すなわち認知が感情に大きく影響することを学ばせたところ,全体的にストレス反応が軽減したことが示された。ところが,その効果は個人によって一様でないことから,さらに児童の認知の歪みの程度別に介入効果の検討を行うこととした。そこで別の小学生に対して,解釈が多義的にできる曖昧なビデオ刺激を提示し,場面の解釈の仕方,すなわち認知が感情に大きく影響することを学ばせたところ,元々の認知の歪みが大きかった児童のストレス反応が軽減したことが示された。次に中学生を対象とした介入では,同一の場面をイラストで提示し,自分の認知とは異なる認知を考えることによって,認知の多様性を身につける方法を用いた。その結果,認知の多様性が身についた生徒は,ストレス反応の軽減が生じることが示された一方で,ストレス反応の高い生徒ほど認知の多様性が身につきにくいことも示された。さらに,高校生を対象とした介入では,長期聞,継続的に実施できるストレスマネジメントプログラム試案を立案した。学校の中で実施されるプログラムは,授業の枠に収まることが重要であることから,認知(認知的再体制化など),行動(社会的スキル訓練など),情動(リラクセーションなど)の3つのワークから成り立つプログラムを作成した。次年度以降,高等学校の教員と再検討を行いながら,プログラムを公表する予定である。
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