本研究は、日本人の生活リズムに適合し育まれた季節行事である節句に利用される植物の香気成分の自律神経調整機能を明らかにし、より多くの日本人の嗜好に合致し日本の豊かな四季や伝統を楽しみながらストレスを解消し生活習慣病を予防できる芳香性素材の開発を目的とする。 初年度は、評価系を構築する目的で、ヒトおよびマウスに種々の刺激を与え、自律神経系変調の測定を検討した。ヒトにおいては、学生を被験者とし、閉眼状態で簡単で短時間のタスクを実施させてストレスを付加し、脳波心電リアルタイム解析システムMemCalc/Makin2を用いて自律神経系の変調を解析した。タスクとしては、トランプの4種のマークがランダムに述べられる中で予め指定したマークが述べられた時にだけスイッチを押すタスク(トランプスイッチ)、15個の一桁数字の足し算、2つの二桁数字の足し算、三桁数字から指定した二桁数字の繰り返し引き算、の4種類を行なった。自律神経系活動の指標としては、脳波(α波)、α波の割合(α/β)、心拍パワースペクトル(LF/HF)、心拍数を用いたが、脳波は個人差が大きく、被験者10名程度では解析が困難であった。一方、心拍数の変動は個人差が少なく、感度よくストレスの付加による自律神経系の変調を捉えることが可能であった。各タスクのストレス強度は、トランプスイッチタスク<15個の足し算<二桁の足し算<引き算の順であった。 マウスにおいては、電極を装着し麻酔下で種々の薬物を投与し、心拍ゆらぎリアルタイム解析システムMemCalc/Tarawaで解析した。交感神経遮断薬Propranololや副交感神経作動薬Carbacholの副交感神経刺激効果、副交感神経遮断薬Atropineの交感神経刺激効果と共に、重陽の節供に菊花と共に用いられた呉茱萸のアルカロイドEvodiamineが交感神経刺激作用を有することが確認できた。
|