本研究は10年間にわたる経過観察結果から、運動習慣を含めた日常生活様式が周閉期女性の骨量に与える影響の違いを明らかにするとともに、この時期の骨代謝回転動態と生活習慣との関係について総括することを目的とする。本年度はこれまで2年間にわたる各指標を経年的に比較し、運動再習慣化と骨量及び骨代謝回転動態との関連について検討した。その成果について、関連するスポーツ科学関連学会誌に投稿するとともに、報告書の作成を行った。 これまでに運動習慣を有していたが、何らかの理由で現在は運動習慣を有しておらず、本研究で運動指導を受けている運動復帰群に対して、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせた複合トレーニングの指導を行った結果、運動復帰群の骨密度関連指標は閉経の有無に関わらず運動指導後が指導前に比べて高値を示した。血液生化学検査による骨代謝関連生化学指標においても骨強度の増加を裏付ける結果が得られ、周閉期における運動再習慣化は骨密度および骨代謝回転に好ましい影響を及ぼすことが指摘できた。これらの成果の一部は、「閉経後女性の骨強度に及ぼす筋力と歩行の複合トレーニングの効果」として名城大学総合研究所紀要に掲載予定である。 また本研究課題に関連して、運動直後における副交感神経活動再賦活のタイミングを心拍変動周波数解析法により検討した。最大運動直後における副交感神経活動の指標であるHFパワーの賦活のタイミングには、高齢群および若年群で時相のずれを認めたが、両群の最大酸素摂取量と最高心拍数に差異を認めず、最大呼吸数は高齢群で高い傾向を示したことから、HFパワー賦活のタイミングの差異には加齢だけではなく、それ以外の要因も影響していることが考えられ、今後の検討を要するものと考えられた。これらの成果の一部は、「Age-related heart rate variability immediately after exercise」としてスポーツ科学関連学会英文誌に投稿中である。
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