本研究は10年間にわたる経過観察結果から、運動習慣を含めた日常生活様式が周閉期女性の骨量に与える影響の違いを明らかにするとともに、この時期の骨代謝回転動態と生活習慣との関係について総括することを目的として、周閉期の骨量と骨代謝回転動態に及ぼす10年間の定期的な運動習慣の影響、周閉期における身体活動量の変化が骨量と骨代謝回転動態に及ぼす影響、周閉期における運動再習慣化が骨量と骨代謝回転動態に及ぼす影響を検討した。これに関連して、運動直後における副交感神経活動再賦活のタイミングに及ぼす加齢の影響を検討した。 1.周閉期女性の骨密度について運動習慣の有無によって比較検討を行った結果、閉経前から骨密度関連指標の低下を認めたが、その度合いは対照群で大きく、運動習慣による閉経以降の骨密度低下抑制効果が考えられた。 2.周閉期女性を対象として運動指導を行った結果、骨密度関連指標と骨代謝関連生化学指標において閉経前群が閉経後群に比べて高く、運動群が対照群に比べて高値を示した。また中高年長距離ランナーを対象とした共分散構造分析の結果、トレーニング水準と性ホルモン応答は年齢に伴う最大酸素施摂取量の減少に関連しており、トレーニング距離(km/週)は年齢に伴う最大酸素摂取量の減少を抑制することが示唆された。 3.運動復帰群に対して運動指導を行った結果、骨密度関連指標および骨代謝関連生化学指標の増加を認め、周閉期における運動再習慣化は骨密度および骨代謝回転に好ましい影響を及ぼすことを指摘した。 4.運動直後における副交感神経活動再賦活のタイミングを心拍変動周波数解析法により検討した。高齢群および若年群における最大運動直後のHFパワー賦活のタイミングには時相のずれを認めたが、他の生理学的諸変量に差異を認めず、加齢以外の要因も影響していることが考えられた。
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