研究概要 |
本年度は,昨年度測定途中であった検体を測定し終え,前年度までに行った調査の再解析を行い,各ストレス関連指標の時間的推移をどのように示した場合に,抑うつ状態をより正確に表すことができるのかを検討した。 既存のいわゆるストレスマーカーとしては,コルチゾル,クロモグラニンA,sIgAを用いて,起床直後と起床30分後の各物質の濃度を比較した。この中で,sIgAの起床後30分後の濃度/起床直後の濃度比が抑うつ状態を鋭敏に示すことを発見した。コルチゾルに関しては,予想に反し明確な結果は得られなかった。 精神的ストレスを反映する新しい指標と考えられるだ液からの微弱発光に関しては,測定時にH2O2を加えてから100秒間のフォトン総量が精神的ストレスを最も反映するであろうことを研究分担者の高木とともに発見した。しかしながら,微弱発光に関しては,未解明の課題が多々ある.まず,だ液微弱発光が必ずしも血清のものとは相関しないこと(血清微弱発光は,血清過酸化脂質と相関ずる)から,だ液の微弱発光が身体面から眺めた場合に何を示しているのかが未解明であること。次に,はずれ値または特異値が多く,それが測定に起因するのか(測定中にほんの僅かでも光が入ると測定値に著しく影響する),だ液の採取方に起因するのか,実際に発生フォトン量が瞬時に上昇するのかなど今後追求する必要がある。課題は残るが,フォトンは生体での酸化過程で発生するとされるため,各種疾患の原因となる酸化反応を把握する上で重要な指標と言えるだろう。
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