研究概要 |
運動量測定回転ケージを使って、雄性SHRSPを生後6週齢から(平均血圧155mmHg)約5ヶ月間、自由運動群の約半数が脳卒中を発症するまで長期自発運動をさせ、脳卒中発症遅延と延命効果について検討した。非運動群SHRSPは、実験開始後12週目には全例発症したのに対し、自由運動群では5ヶ月後の屠殺時においても、約60%が発症せず、著明な脳卒中発症遅延と延命効果を認めた。この効果は、運動開始を平均血圧190mmHgに達した生後8週齢からとした場合にも同様に認められた。 昨年度の結果に基づき、自由運動による脳卒中発症遅延ならびに延命効果のメカニズムを明らかにするために、血管保護作用に関与するNO bioavailabilityの増加について、細胞内シグナル分子と転写因子の変化をwestern blotと免疫組織学的方法で検討した。3つのMAPキナーゼのリン酸化(p)タンパク、p-ERK1/2,p-p38,p-JNKレベルは、自由運動により有意に抑制された。また、これらMAPキナーゼによって活性化される主要な転写因子のひとつであるc-Junとc-Fosのリン酸化ならびに核内移行も有意に抑制された。さらに、炎症反応や血管リモデリングに関与する遺伝子発現に重要な転写因子であるNF-kBのリン酸化ならびにIk-Bαの解離も有意に抑制された。これらの生化学的結果を確認するため、免疫組織学的に検討した。非運動群血管では、内皮細胞および血管平滑筋細胞において、NF-kB,c-Jun,c-Fosの明らかな発現増加と核内移行が認められた。一方、自由運動群ではこれら転写因子の発現は有意に抑制された。 これらの結果から、自由運動はNO bioavailabilityの増加を介して、AP-1(c-Jun,c-Fos)とNF-kBの転写因子を抑制し、血管保護効果をもたらしていると考えられた。
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