研究課題
老舗の地域通貨「おうみ」の活動休止をはじめとして日本の地域通貨活動が岐路に立つなか、体制を整え再出発をはかりつつある2つの地域通貨(岩手県西和賀町の「わらび」、神奈川県大和市の地域通貨「ラブ」)や、さわやか福祉財団の「時間通貨」と総合的学習に関する取材等を行った。これまでの調査を通じて、フォーマル(商工会・行政)型=男性主導型/インフォーマル(相互扶助)型=女性主導型の傾向を見出すととができた。地域通貨の実践は理論上ほど容易ではないにもかかわらず新たな地域通貨も登場している(盛岡市内の「かじか」等)ことは、人々が法定通貨を補完する何かを求めていることの証左であり、松葉口はアマルティア・センのケイパビリティ理論に着目し、法定通貨との相互補完性だけでなく貨幣の意味そのものを問う教育の可能性について「地域通貨による地域再生-ケイパビリティとジェンダーの視点から-」と題して日本消費者教育学会第26回大会で発表した。ESDとジェンダー課題の統合に関連しては、「ESDの10年」を提唱した日本の歴史を振り返り、戦後の教育重視と経済成長との関係の背景に内在していた性別役割分業の体制化とサブシステンスの崩壊という側面を、アンペイド・ワークの問題と絡めて省察的に捉えることの重要性について(とりわけ途上国でのESD実践への示唆として)、昨年3月の豪州調査の成果を含めて論文化した。その直後に、英国プリマス大学での国際シンポジウムでエコフェミニズムとESDとを関連づけるテーマが設定されるなど興味深い動向もあり、今後この分野の充実を図る必要性を確認することができた。
すべて 2007 2006
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岩手大学生涯学習論集 第3号
ページ: 1-7
国際ジェンダー学会誌 第4号
ページ: 57-80
Sustainable Cities : Japanese Perspectives on Physical and Social Structures. (Hidenori Tamagawa ed.)(United Nations University Press)
ページ: 70-95