今年度は、生活クラブ生協の目主活動グループから発足し現在は活動休止中の「クラブ・ママーズ」、さわやか福祉財団傘下の「たすけあい遠州」、渋谷中心に展開する「アースデイ・マネー」等への取材を行った。特に前者2つの事例は活動の担い手が女性であり、今日アンペイド・ワークとしてその社会的評価の必要性が問われている家事労働や介護などに対応したものであった。その利用者たちは、法定通貨に頼らずとも「困った時いざとなれば使える」という「安心感」を得ていた。また、アースデイ・マネーは、ドブソンが提唱するエコロジカル・シチズンシップを実践している好事例であり、都市と農村を結ぶことやあらゆる世代を取り込むことを含めて「持続可能性」の観点から今後の展開が期待される新しい形であった。その他、「学校・地域・近代社会」が排除してきたものへの問いとして発生した「だがしや学校」が各地で広まりつつあり、そこで子どもたちの何らかの労働の対価としてエコマネーが使用されている事例が散見されることも明らかとなった。それらの事例をもとに、地域(時間)通貨の可能性と課題について、ESDの視点から整理した。 国内外でESDのネットワークが広がりつつあるなか、ESDを意識しない活動のなかにも本質的な実践が潜んでいることを明るみにすることができたと同時に、「教育」と「経済」の乖離を打破することが、今後の重要な課題となることを確信することができた。
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