研究概要 |
前年度の成果として、衣服の修正による着衣動作の負担軽減の評価を健常な女子学生5名と運動機能障害のある男子1名を対象に行い、心拍スペクトル解析(HRV)による評価方法の有効性を確認でき、それにより修正効果も確認できたが、19年度はさらに、本評価方法の有用性を広げるために、実験および解析における条件設定等を目的として、試験着の着衣順序による影響、心拍スペクトル解析(HRV)と官能検査の関係性、個人別のHRV解析結果の傾向について検討した。被験者は20代女性30名とした。編布試験着と織布試験着の着衣順序を被験者の半数ずつ変え、着衣前、着衣後1分、2分、3分のLF, HFとその比を指標として検討した。その結果、着衣後のHRV反応は、先に着た試験着に影響されることが明らかとなり、実験における着衣の順序効果に配慮すべきであることが確認された。また、官能検査では体感的な負担が評価されることが示され、HRVとの併用により着衣動作による負担の解析がなされることが適切であると考えられた。個人別の解析データには4つの傾向がみられたが、着衣後1分でLF/HFが上昇する傾向は着衣順序に関わらず43%の出現率でもっとも多かった。 なお、本研究の最終的主眼は運動機能に障害がある人の衣服の着脱改善への支援であるところから、この研究の成果をもとに、肢体不自由養護学校の保護者およびその近隣の市民を対象に修正効果の公開、および保護者を対象とした既製服の修正方法の技術的指導へと発展させ、運動機能に障害がある人の衣生活の改善に関する啓発活動を展開した。
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