過去2年間には、(1)接触度評価方法の確立、(2)屋外の実際のスポーツシーンでの運動機能性の観察、(3)湿潤素材着用による運動のパフォーマンス性能の低下を測定した。具体的には、指定のスポーツシャツを着用させた被験者に、上半身の動きが大きい一定の運動を負荷させ、このときの被験者の生理的データを、携帯型のデータ収集システムを用いて測定し、同時に測定した快適感の官能評価との関連を調査した。 今年度は、外衣または内衣が湿潤している場合の熱移動特性について測定した。簡便な発熱体を用いて、一定の量に含水させた内衣用素材、あるいは、外衣用素材を発熱体の周りに一定の衣服間隙を設定して、巻き付け、それぞれの場合の熱移動特性を測定した。熱移動特性の評価を発熱体内部の水温を測定し、その水温の低下から、時定数を算出した。この時定数の大小によって、放熱の大小を評価することとした。このような簡便な発熱モデルを用いた場合にも、外衣が湿潤している場合と内衣が湿潤している場合とでは、発熱体と接触していないにもかかわらず、内衣が湿潤している場合の発熱体から外界への熱移動量が大きいことが明らかになった。 以上の測定から、湿潤素材が皮膚に接触しているときは、放熱量が増大し、かつ運動機能も低下させること、また、皮膚から一定の間隔をもって接触しているときであっても、身体に近い部分に湿潤素材を着用することは、放熱を増大させることが明らかになった。
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