研究概要 |
乳児は泣きやぐずりによって養育者に不快感や苦痛を訴え,養育者はそれによって乳児の状態を知り乳児の情動を調整するためにあやし行動をおこす。乳児はそのような相互交渉によって自分の情動を平静化させる。しかし,適切なあやし行動を行えないと,乳児の情動は治まらない。そして,それがまた,養育者の情動をネガティブに変え,これが引き金になって乳幼児の虐待を引き起こすことも考えられる。 そこで本研究では,あやし行動時における乳児とその対面者の相互の情動変化について,あやし行動時における乳児とその対面者の相互の情動変化にっいて,生理心理学的研究を行った。 実験参加の同意を得た学生16名(女子8名・男子8名)を被験者とした。対象乳児は,6ヶ月の男児1名である。被験者は別室で60分間過ごした後,唾液採取を行い,乳児を10分間あやす。その20分後,再度,唾液採取を行った。また,実験後,主観的感情評定をするためのアンケートとインタビューを行った。乳児と対面者の行動と表情は,リモートコントロールが可能なビデオカメラ4台で撮影し,4画面合成録画をした。録画した映像を5秒間に区切ってコンピュータに取り込み,動画ファイルを作成した,行動・表情のカテゴリー分析を行った。また,乳児に関しては,Lewisら(1993)の方法を参考にして,泣きの評価を行った。唾液中コルチゾール濃度は採取した唾液試料を遠心分離した後,冷凍保存する。分析時に唾液を解凍,ろ過した後,セミミクロカラム高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。 その結果、乳児に対して苦手意識のある学生が乳児をあやした場合,交流中に乳児のコルチゾール値が上昇した。一方,対面者は交流中にコルチゾール値の有意な上昇はみられなかった。
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