研究概要 |
乳児は泣きやぐずりによって養育者に不快感や苦痛を訴え,養育者はそれによって乳児の状態を知り乳児の情動を調整するためにあやし行動をおこす。乳児はそのような相互交渉によって自分の情動を平静化させる。しかし,適切なあやし行動を行えないと,乳児の情動は治まらない。そして,それがまた,養育者の情動をネガティブに変え,これが引き金になって乳幼児の虐待を引き起こすことも考えられる。 そこで本研究では,あやし行動時における乳児とその対面者の相互の情動変化について,あやし行動時における乳児とその対面者の相互の情動変化について,生理心理学的研究を行った。今年度は,あやし行動,あやし言葉,対乳児音声について分析を行った。 乳児との接触経験がない男子学生(18〜24歳)18名,女子学生(18〜22歳)14名を被験者とし,生後3〜4ヶ月の男児1名を対象乳児とし,実際に乳児をあやす場面で,学生が(1)どのようなあやし行動を行うのか,(2)どのようなあやし言葉を発するのか,(3)その音声にmothereseが出現するのかについて調べ,それらに(4)男女差はみられるのか検討を行った。男女とも乳児の機嫌が悪くならなかった学生は,multimodal mothereseとして知られる非接触的あやし行動や遊戯的音声を発言しながら乳児と関わっていた。一方,男女ともに乳児の機嫌が悪くなった学生は,身体運動的なあやしや接触的あやし行動,注意喚起や受容的な発言をしていた。しかし,そのどちらにおいても,男女ともにmothereseが出現していた。即ち,乳児との接触経験がなくてもmothereseが出現することが明らかになった。
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