研究概要 |
わが国では,人口構造の高齢化と高齢者1人当たり医療費の増加により国民医療費は増大を続けてきた。今後も国民医療費は一層増大するものと推測される。このため公的医療保険の財政は悪化しており,その解消のために高齢者及び働く世代の医療費自己負担や保険料が引き上げられ家計負担が重くなっている。この傾向は今後も続くことが予想されている。高齢者が必要なときに必要な医療サービスを受けられる体制の維持は不可欠であると同時に,高齢者及び働く世代の家計の健全化を図ることは重要な課題である。これらの両立のためには,高齢者の健康の維持・増進を進め,健康水準を上げることが必要である。その実現のための方策の一つとして,高齢者の健康維持・増進に有効な暮らし,生活環境,医療サービス供給システムの構築が挙げられる。 ところで,わが国の高齢者1人当たり医療費は,都道府県別,市町村別に見たときに格差が大きく,極めて高い地域がある一方で極めて低い地域も存在する。その違いの実態と違いを生んでいる要因について,堆域の暮らし,生活環境,医療サービス供給量の面から解明を行った。具体的には,高齢者の1人当たり医療費に対して,データは,2001年から2005年における広島県の全市町村(28市町村)について,実態調査を行った上で,国民健康保険加入者である70歳以上の高齢者1人当たり医療費および暮らし,生活環境,医療サービス供給量に関するパネルデータを用いて,医療費に影響を及ぼす要因について計量分析を行った。その結果,家族の規模,地域の経済力,自然・社会環境,医療サービス供給量などが高齢者1人当たり医療費に影響している要因であることが明らかになった。これらの結果に基づき,今後の政策に対する提言を行った。
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