研究概要 |
○今回,石垣市立八重山博物館へ行った時には,2000年に展示されていた紅型衣裳はなかった。紅型は,首里などに特別に注文して誂えたようである。他に八重山上布と芭蕉布が展示されており次の研究へと繋げることができる。 ○石垣市伝統工芸館では,織物組合の松竹喜生子氏に解説していただくことができた。芭蕉布に型染(ステンシル)が一時期流行していたことがわかった。ここで,苧麻の生葉を干しているところを見ることができた。 ○八重山の高機は,アヤツブル(綾頭)とよぶ独特な機織機で,それを見る事が出来た。通称ミンサー織と言われるが,正確には,ミンサー文様を絣織したものである。 ○ギリシャに行く機会を得て,考古学博物館,民芸博物館,フォーク・アートミュージアムなど視察したが,型染を探すことはできなかった。文様表現は刺繍が主流である。 ○那覇市歴史博物館1周年記念展「おしゃれ・モダン王国の技 那覇士族「貝氏」福地家伝世品」にて小紋紅型,中形,筒引き紅型を見ることができた。この時,上流階級の喪服に使われたという「水色地経緯絣木綿衣裳」を見ることができた。このことは,喪服に絣文様が使われていたとする富士栄の論文「琉球絣の現在一その意匠と活用」を裏づけるものであった。 ○沖縄県立博物館・美術館が11月1日にオープンした。中でも県立博物館所蔵の子供の紅型の3点は,いずれも年代不明,作者不明ではあるが,見事な染織である。またそれぞれ絹,麻,綿の素材が使われていて,興味深い。次の3点であるが,図録には載っていない。1「浅地稲妻に花の丸文様衣裳」(袷・絹),2「白地霞に鶴松梅楓文様紅型子供着物」(単・麻),3「段染鶴竹梅模様紅型子供着物」(単・綿)。これらを他の書籍「琉球紅型」から探し,スキャナで取り込み,研究に役立てた。 ○学校教育の教育現場で、地域教材として紅型を取り上げ,大学院生の島袋麻美の教育実践を指導し,教育成果を得た。 ○東京国立博物館に於て「国宝薬師寺展」の中で吉祥天像があり,「繧繝」による縁取りと紅型の隈取りとの関連性と相違点を見ることができた。常設展では,葛飾北斎が琉球八景を描いた錦絵があった。このことは,型染の原型を江戸の頃,琉球の人々は目にしたことになる。
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