家族農業経営では、農業経営と家族生活とが不可分の関係にある。本研究では、家族協定および家族経営協定の締結事例より、家族生活における役割分担が、農業経営における役割分担に対して与える影響について、その世代変化を分析することを目的としている。 初年度にあたる平成17年度は、農家の後継者確保を目的とした戦後自作農主義政策下での家族協定農業と、男女共同参画による農業経営体の確立を目標に掲げる新農政下での家族経営協定について、制度的変遷、普及推進活動の足跡、普及の推移を全国レベルで把握することに努めた。 今日、新農政の下、家族経営協定の普及推進担当官庁である農林水産省経営局女性・就農課を通じて、全国の地方農政局(沖縄と、既に訪問調査を実施している九州を除く、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国の農政局)および北海道庁を訪問し、管内の普及の実態に関して担当者のヒアリングを実施し、統計情報を収集し、さらには管内の代表的な事例農家を個別訪問した。その結果、家族協定や家族経営協定の普及について、地域差が大きいことが明らかとなった。 なお、8月21日から27日にかけてハンガリー・ケストヘイ市で開かれた第21回ヨーロッパ農村社会学会大会のジェンダー部会において、戦後自作農主義政策下での農家女性のキャリア形成にみる世代変化(Generational Change in Career Formation of Farming Women and Agricultural Policy in Postwar Japan)を口頭発表した。現在、座長を務めたウプスラ大学のイルディコ・アズタロス(Ildiko Asztalos)の編集により、スウェーデンのエルゼフィーア出版社(Elsevier)の農村開発シリーズとして、2006年末に刊行すべく準備を進めている。
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