研究概要 |
本研究では,過ギ酸でシスチン残基をシステイン酸残基に酸化した羊毛のアミン化合物に対する消臭性能と,2-メルカプトエタノールでシスチン残基をシステイン残基に還元した羊毛のメルカプタン化合物に対する消臭性能をテドラーバック法とガスクロマトグラフィーの両方で評価した。この結果,酸化羊毛は極めて優れたアンモニア吸収性能を有することが明らかとなった。C_nH_<2n+1>NH_2,(n=1〜4),(CH_3)_nNH_<3-n>(n=2,3)に対する吸収性も測定したところ,モノアルキルアミンのアルキル基が長くなるほど,また,アルキル基の置換数が多いほど吸収性は低下した。この結果は,スルホン酸基とアミンとの結合において,アミンに置換したアルキル基が立体障害として作用することを示唆している。酸化羊毛をさらにサクシニル化することによってカルボキシル基を導入したところ,アンモニア吸収性は向上しなかった。酸化羊毛と酸化後サクシニル化した羊毛を繰り返し使用した場合のアンモニア吸収性を測定したところ,共に繰り返し回数が増すにっれ徐々に吸収速度は低下した。1回目のアンモニア吸収実験では酸化羊毛のほうが酸化後サクシニル化した羊毛より高い吸収性を示したが,2回目以降は酸化後サクシニル化した羊毛のほうが酸化羊毛より速くアンモニアを吸収した。このことは弱酸であるカルボキシル基より強酸のスルホン酸基のほうがアンモニアとの結合する速度が速いことを示唆している。 還元羊毛のエチルメルカプタンに対する吸収性を測定した結果,4Lテドラーバック中の初期濃度80ppmのエチルメルカプタンは3〜15%程度しか減少せず,還元処理による消臭性向上への効果は少なかった。しかし,羊毛の含水率を変化させて同様に測定したところ,含水率によってメルカプタン吸収性は異なり,約100%の水を含む還元羊毛が最も高い吸収性を示すことが明らかとなった。
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