研究概要 |
健全な衣生活を維持するために行なわれる洗浄に関し、特に水環境への負荷を軽減するための研究として、洗剤組成、洗浄水、洗浄方法など様々な観点からの検討が行なわれている。本研究では、研究報告が少ない洗浄水を中心とした検討を行なうこと、すなわち化学品を最小限に留め、天然由来の物質である酵素などを活用した洗浄組成について提案することを目的とした。特に、家庭など行なう湿式洗浄条件を前提に水の性質に着目し、特殊な農業用作業着に付着する農薬の洗浄について、平成17年度に検討した。そこで、一般の衣料に付着する混合汚れをモデル汚れとしてした洗浄をテーマとした。これらの汚れに対して種々の条件により除去性を調べ、実用化への可能性を探った。結論は以下の通りである。 1)湿式人工汚染布の洗浄性に及ぼす機械力の影響: すでに湿式人工汚染布に対する機能水(アルカリ電解水)の効果に関して、通常の水に比べて効果が高いことは報告した。しかし、より洗浄効果を高めるために、他の電解還元水や複合成分として酵素を添加し、洗浄力に対する機械力の影響について調べた。 40rpm,80rpm,120rpm,160rpmの4段階に分けて洗浄したところ、30℃までは機械力が強くなるほど除去性も高くなった。しかし、40℃では、高速回転の160rpmで、洗浄性が低下した。また、同時に添付している白布の汚染率が高くなることから再汚染が進んだことによるものといえる。 2)湿式人工汚染布の洗浄性に及ぼす酵素および界面活性剤の添加の影響: 20℃での酵素添加の影響を無添加系と比較するとアルカリ電解水ではそれほど添加効果は認められなかった。が、水道水、イオン交換水、電解還元水などは酵素の添加によって機械力が大きくなるほど向上することがわかった。また、界面活性剤を添加したところ、30℃でSDS4mmo1/1に酵素を添加した機能水組成が最も高い洗浄性能を示すことがわかった。 3)機能水の洗浄機構: 機能水とSDS混合系での除去効果に関して、界面活性剤のミセル形成濃度との関係を調べたところ、機能水中でのSDSのミセル形成濃度が通常の水に比べて、低濃度領域にシフトすることがわかった。このことが、界面活性剤の減量化を可能にしたものと結論づけた。
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