研究概要 |
衣類や住空間設備品にさまざまな色と,高い消臭・抗菌機能を持たせることを目的に,18年度は堅ろう性が高い含銅反応染料と銅塩で綿布を媒染し,染料の種類や濃度(1または5%o.w.f.),媒染方法が消臭効果に与える影響と,ガスクロマトグラフ法を用いた消臭機構の解明を行った.消臭実験では染料としてC.I.Reactive Blue237(染料B)とC.I.Reactive Blue71(染料T),綿布としてマーセル化メリヤス綿布と未マーセルメリヤス綿布,悪臭物質としてエチルメルカプタンを用いた.5%o.w.f.の染料Bで媒染染色した未マーセルメリヤス綿布では,含銅量は染色布<(先媒染+染色)布<先媒染布<(染色+後媒染)布の順であった.染料中の銅の割合は少なかった.先媒染で吸着した銅イオンは続く染色で反応染料の強い結合力により,一部脱着した.後媒染では染料にさらに銅が結合した.消臭効果は染色布<(先媒染+染色)布<(染色+後媒染)布<先媒染布の順であった.消臭性は含銅量に必ずしも比例せず,初めから染料に結合している銅より,直接綿と結合する銅や染料に後から配位した銅の消臭効果が大きかった.少ない含銅量で高い消臭効果を持つ媒染染色布の調製には,未マーセルメリヤス綿布に5%o.w.f.の染料Tで染色し,後媒染することが効果的であることがわかった.さらに,含銅直接染料C,I.Direct Blue200と銅塩で媒染染色した綿繊維のエチルメルカプタンに対する消臭過程を,固定相を繊維とするガスクロマトグラフ法(GC法)で調べた.クロマトグラムにはエチルメルカプタンとジエチルジスルフィドと思われる2本のピークが現れた.これらの系での消臭機構は直接綿と結合する銅や染料に後から配位した銅により,エチルメルカプタンが酸化されてジエチルジスルフィドになり,繊維に吸着すると考えられる.
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