身体の一部がものに触れた瞬間に、そのものをどのように感じるかを評価することは、物質評価においてたいへん重要である。これまで半無限固体の非定常熱伝導モデルから新しい触感温度評価式を提唱しているが、身の回りには異質材表層で覆われた材料が多く、本研究では初めにそれら異質材表層の触感温度に及ぼす影響を数値解法から検討した。材料と皮膚内の温度分布の最終浸透深さを考慮して、皮膚、表層、材料の各領域における要素分割の個数と刻みを適宜決め、それぞれの温度分布から触感温度に及ぼす表層の厚さの影響を検討した。その結果、触感温度の物体温度からの偏差は、皮膚と表層・母材間の温度差、これらの熱物性値、および表層の厚さと温度受容器の深さから定まること、触感温度に及ぼす表層厚さと熱浸透率比の影響は、表層厚さの減少に伴い急激に顕著になることがわかった。 また、異質材表層が物体表面に存在するときの、皮膚と物体の接触面温度や接触温冷感への影響を被験者実験により検討した。アルミニウム板に塩化ビニリデンフィルムを異なる枚数、貼付することにより貼付枚数の多いものほど接触面温度の低下が少ないことが実測された。さらに、温度を可変できるシリコンラバーヒータを用いた温感測定器を2台作製し、測定センサの位置や充填材の影響、熱電対の種類などを考慮して測定精度を高め、ポリプロピレンフィルムを用いた接触温冷感の比較実験を行い、異質材表層の影響を検討した。表層材としてポリプロピレンフィルムを用いた実験では、フィルムの存在により設定温度の知覚が緩和される、すなわち皮膚温により近く感じられることが確認された。その効果は物質の温度と体温との差が大きいときほど、異質材表層の影響が大きいことがわかった。
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