研究概要 |
本研究は食行動・食意識の家庭内伝承が現在どのように行われているかを調査するとともに,それが食生活および食生活観の形成に与える影響を検討することを目的としている.昨年度は食行動の伝承に関するアンケートの配布・回収,および食事調製に関わる技術についての調査を行った.今年度はさらに調理の伝承および味覚嗜好の伝承について検討を行った. 調理の伝承では,調理の際の材料選択や調味がどの程度,親から子へと伝承されているかを知るために,親子それぞれが調理した試料の類似性を検討,ならびに子へのインタビュー調査を行った.試料には肉じゃがを用い,大学生とその親22組を対象とした.その結果,使用具材や使用調味料には多くの親子に共通性が見られ,家庭の影響が考えられた.一方,調理品煮汁の糖度,塩分濃度は親子による類似性が低かった.インタビュー調査の結果,親の料理をおいしいと感じ,その味を再現しようと試みる子が多かったが,そのほとんどは親の味に近づいてはいないと感じていた.その中で,親と調味濃度が近かった子は,子どものころから家庭の食事つくりを任されたと答えていた.すなわち,親の味を再現するためには一人で食事作りのすべての工程を行い,さらに出来上がった料理に対して家族の批評を受けることが必要であると考えられた. 味覚嗜好の伝承では,4種の味付けのひじき煮を試食してもらい,家族員ごとに好きな味付けを選択してもらった.主に大学生の子を持つ家庭を対象とし,69家族(277名)から回答を得た.同時に自家の家庭料理や市販の調理済み惣菜・弁当の味に対する嗜好についてアンケート調査を行い,親子の類似性や選んだひじき煮の味付けとの関連を検討した. 昨年度に回収したアンケートは現在も解析を進めており,さらに中学生の子を持つ親子に対する調査を加え,今後食行動の伝承について明らかにしていく予定である.
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