研究概要 |
1.腫瘍壊死因子(TNF)誘導ネクローシスに対するドコサヘキサエン酸(DHA)の効果:アポトーシスに加え、細胞外からの刺激で誘導されるネクローシスもプログラム細胞死の一つであり、組織障害を伴う疾病の要因となっていることが明らかになってきた。前報(J.Nutr.130(2000)1095-1101)において、TNF誘導アポトーシスが、細胞膜にDHAを取り込ませた細胞では阻害されることを報告したので、今回は、TNF誘導ネクローシスに対するDHAの影響を調べた。TNFにより主としてネクローシスが誘導されることが知られているマウス繊維芽肉腫細胞L929に種々の不飽和脂肪酸を取り込ませ、TNFで刺激した所、DHAをはじめ、いくつかの脂肪酸により細胞死が抑制された。その抑制効果の大きさはDHA>DPAn^-3【greater than or equal】EPA>AA【approximately equal】20:3(n-6)【greater than or equal】22:4(n-6)であった。一方20:3(n-6),22:4(n-6),18:1,18:2には抑制効果がみられなかった。アネキシンV・プロピジウムイオダイド・ヘキスト染色やDNAラダーの検出から,L929細胞はTNFにより主としてネクローシスを誘導されていることが確かめられた。以上よりDHAはTNF誘導アポトーシスばかりではなく,ネクローシスも阻害する効果を持ち,二つの細胞死のモードに共通したシグナルを阻害することで,細胞死を伴う種々の組織障害を軽減する効果をもつ可能性が示唆された。 2.前報(J.Nutr.130(2000)1095-1101)においては,ビタミンEにTNF誘導アポトーシスを阻害する効果があることも報告した。今回,同様に抗酸化作用をもつメルカプトエタノール,N-アセチルシステインの作用を調べたところ,ビタミンE同様に,TNF誘導アポトーシスを阻害することがわかった。
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