研究概要 |
1.前年度までの研究成果を報文として発表した(Biochim. Biophys. Acta176,454次項11.研究発表に記載>その概要は以下の通りである. ドコサヘキサエン酸(DHA)や他の多価不飽和脂肪酸をL929細胞のリン脂質膜に取り込ませ,腫瘍壊死因子(TNF)誘導の細胞死に対する影響を調べた.DHAはネクローシスに対しても抑制作用を示し,リン脂質中のDHA, DPA,アラキドン酸の増加がネクローシスの抑制に関連していることが明らかになった.さらにDHA、は,ネクローシスとアポトーシスに共通のシグナル伝達経路に関わっている可能性が示唆された. 2.前年の実験において,ビタミンEと同様に,メルカプトエタノール(2-Me)とN-アセチルシステイン(NAC)がU937細胞のTNF誘導アポトーシスを阻害することを明らかにした.今年度はそのメカニズムを調べる目的で,細胞内グルタチオンレベルを測定したところ,2-MeやNAC処理で細胞内グルタチオンレベルが上昇することがわかった.しかし,ビタミンE処理ではグルタチオンの上昇が見られないこと,また,アポトーシスの阻害活性とグルタチオンレベルの上昇と比例関係は見られないこと等から,抗酸化剤のアポトーシス阻害作用は,細胞内グルタチオンレベルのみでは説明できないことがわかった. 3.新たに神経系細胞のアポトーシスを阻害する物質を調べる目的で,神経系細胞株の一つであるPC12細胞のメチル水銀による細胞死に対する脂肪酸の効果を調べた.しかし,今までの培養細胞のアポトーシスやネクローシスと異なり,あらかじめDHAを取り込ませた場合に,メチル水銀による細胞死はむしろ促進された.このことから,メチル水銀は,他の薬剤とは異なったメカニズムで細胞死を誘導する可能性が示唆された.
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