研究概要 |
1. ビタミンEと同様に,メルカプトエタノール(2-Me)とN-アセチルシステイン(NAC)がU937細胞のTNF誘導アポトーシスを阻害する.そのメカニズムを調べる目的で,細胞内グルタチオンレベルを測定したところ,2-MeやNAC処理で細胞内グルタチオンレベルが上昇することがわかった.しかし,ビタミンE処理ではグルタチオンの上昇が見られないこと,また,アポトーシスの阻害活性とグルタチオンレベルの上昇と比例関係は見られないこと等から,抗酸化剤のアポトーシス阻害作用は,細胞内グルタチオンレベルのみでは説明できないことがわかった.なお、本アッセイをすすめる過程で、グルタチオンレベルは、ビタミンEの溶媒として用いたエタノールでその変動が抑えられることがわかった。 その他の抗酸化成分として、茶カテキン類の効果を調べたが、本アッセイ系では効果がみられなかった。これは主としてカテキン類が水溶性ではなく、エタノール溶液として添加するには添加量の制約があることによる可能性がある。 2.神経系細胞のアポトーシスを阻害する物質を調べる目的で,神経系細胞株の一つであるPC12細胞のメチル水銀による細胞死に対する脂肪酸の効果を調べた.しかし,今までの培養細胞のアポトーシスやネクローシスと異なり,あらかじめDHAを取り込ませた場合に,メチル水銀による細胞死はむしろ促進された.このことから,メチル水銀は,他の薬剤とは異なったメカニズムで細胞死を誘導する可能性が示唆された。その効果をさらに確かめるために、従来から用いていたCCK-8による細胞死判定に変えて、LDHにより細胞死を判定したところ、従来法と同様に、DHAは、メチル水銀による細胞死を促進した。 また、メチル水銀による細胞死に対するEの影響を調べたところ、細胞死を抑制する傾向が見られたが、これは主としてEの溶媒として用いたエタノールの影響であることがわかった。
|