研究概要 |
葉酸が欠乏すると、ホモシステインからメチオニンへの代謝が阻害され、血漿ホモシステイン濃度の上昇を引き起こし、血管内皮に損傷を与えて、動脈硬化性疾患の一因になることが注目されているが、その機構については十分に明らかにされていない。そこで本研究では、動脈硬化のリスクファクターであるホモシステインが、どのような代謝調節によって、葉酸の欠乏により上昇するのかについて、遺伝子レベルで明らかにすることを試みた。 3週齢雄性ラットを2群に分け、葉酸欠乏食(葉酸フリー)と対照食(葉酸8mg/kg diet)を各々自由摂取させた。実験食開始後4,6,8週目に血液と肝臓を採取し、血漿と肝臓の葉酸量およびホモシステイン量を測定した。また、肝臓からRNAを抽出し、リアルタイムPCR法により遺伝子の発現量を測定した。 血漿および肝臓中の葉酸量は、欠乏4週目から有意に減少した。一方、血漿および肝臓中のホモシステイン量は、葉酸量の減少に伴い、有意に上昇した。葉酸欠乏ラットの肝臓では、ホモシステイン代謝に関連する5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸(MTHFR),メチオニン合成酵素(MS),シスタチオニン-β-合成酵素(CBS)のmRNA量が、対照群に対して有意に減少していた。ベタイン-ホモシステインメチル基転移酵素のmRNA量は、欠乏群において増加する傾向を示した。ホモシステインの再メチル化に関与するメチオニンアデノシル基転移酵素,S-アデノシルメチオニンメチル基転移酵素,S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素については、いずれも欠乏群と対照群との間で差が認められなかった。以上のように、葉酸欠乏によるホモシステインの上昇は、MTHFR,MS,CBS各遺伝子の発現が減少することによって起こることが明らかとなった。
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