近年、若い女性のやせ志向は思春期もしくはそれ以前から始まる傾向にあり、食餌制限による影響は母体と子の両方に及ぶと考えられる。本研究は母親の思春期と妊娠期における食餌制限が子の成長と学習能力に及ぼす影響についてラットを用いて明らかにすることを目的とした。 7週齢のWistar系雌ラットを3群に分け、ミルクカゼインと分離大豆タンパク質をそれぞれ10%ずつ含むタンパク質20%食を自由摂取させた群を対照群(CC群)とした。思春期のみ食餌制限した群をRC群、思春期・妊娠期に食餌制限した群をRR群とした。食餌制限の方法は、pair-feedingにより行った。つまり、対照群の飼料摂取量の70%量を体重当たりに換算して制限群に投与した。授乳期間は3群ともに自由摂取とした。思春期は7〜11週齢の5週間、妊娠期間は21日間、授乳期間は21日間とした。得られた結果は次の通りである。 いずれの群においても、妊娠、妊娠維持、出産が可能であった。母ラットの妊娠期の体重増加量、授乳期終了後の内臓周囲脂肪量がRR群では対照群より減少した。思春期のみ食餌制限したRC群では、出生子数、新生子と離乳子の体重、臓器重量がCC群より有意に低い値を示した。また、離乳時までの生存率はCC群より低かった。思春期と妊娠期を通して食餌制限したRR群では、出生子数、新生子と離乳子の体重、臓器重量がCC群より有意に低い値を示した。更にRR群では新生子の体重、臓器重量はRC群よりも有意に低い値を示した。また、離乳までの生存率はCC群より低かった。Morrisの水迷路と8方向放射状迷路実験では、RR群はCC群より学習効果が低い傾向が見られた。
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