2006年と2007年度実施計画の内の2年目の成果を以下に記載する。 1.大腸菌より合成したβ-カロテン開裂酵素(CDO)を使用して、β-カロテンとβ-クリプトキサンチンを基質として、飽和度の異なる脂肪酸の種類(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸)やその量を変化させて、β-カロテン開裂酵素活性への影響を調べ、反転小腸でのレチノール生成量や小腸粘膜酵素で得られたの酵素活性の結果と比較した。基質がβ-カロテンでは、リノール酸濃度上昇により、反転小腸でのレチノール生成量と小腸粘膜CDO活性が上昇した。しかし、β-クリプトキサンチンでは、リノール酸濃度上昇により、反転小腸でのレチノール生成量は増加したが、小腸粘膜CDO活性は上昇しなかった。一方、組み換え体CDOでは、リノール酸濃度上昇により、活性が減少した。この現象は他に報告が無く極めて興味深く、この原因究明が脂肪酸による影響機構を解明する事につながることが期待できる。これに関しての論文2点を作成中である。 2.脂肪酸のカロテノイド吸収への影響を詳細に調べるために、柿カロテノイド、脂肪酸、モノグリセライド、レシチン及び胆汁酸による人工的なミセルを作成し、反転小腸と反応させ、その吸収量を調べることを試みた。しかし、結果を示せるに至らず引き続き検討中である。 3.通常、プロビタミンAには作用する開裂酵素は同一であると言われているが、そのことの証明をβ-カロテンとβ-クリプトキサンチンを基質として検討した。小腸粘膜酵素を精製後、DEAEセファロースカラムで基質のちがいによる反応パターンのより別酵素の可能性について検討したが、違いがみられなかった。この他、組み換えCDOの使用等による結果も含め同一かどうかさらに検討中である。
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