研究概要 |
共焦点レーザー走査顕微鏡は,微小なピンホールによって非焦点情報を物理的に排除するため,「厚みのある試料」の観察を可能とする。この特徴を利用した食品の新しい観察方法の開発を目的に研究をおこなった。平成18年度は,構造の観察結果と力学物性値の関係について検討し,1)デンプン粒の観察方法と物性との関係,2)タンパク質のゲル構造を観察した結果の定量化,および物性との関係,について明らかにできた。まず,デンプン粒の観察方法と物性との関係についての研究は,前年度,増粘多糖類がデンプンの糊化において,デンプン粒からデンプン構成成分の溶出を抑制する様子が観察できることを示した。今年度は,デンプン粒の観察結果と力学物性測定から得られるtanδ値はよく対応することを示した。これらの結果から,増粘多糖類は糊化においてデンプン粒からデンプン構成成分の溶出を抑制するため,系の粘性的性質を増加させると考えられた。次に,タンパク質のゲル構造を観察した結果の定量化,および物性との関係についての研究は,豆腐をモデルとして,ゲル構造の観察と力学物性測定をおこなった。実験は,分離大豆分離タンパク質(SPI)とその主要成分である11Sグロブリン(11S)についておこなった。SPIと11Sのゲルは,フラクタル解析が可能であることを示し,フラクタル次元を求めた。凝集体の構造はクラスター・クラスター凝集(CCA)によって作られると考えられた。また,ゲルの凝集体の密度を求めたところ,11SはSPIよりも凝集体の密度が高いことを明らかにした。力学物性測定結果から,11SはSPIよりも硬いゲルを形成することを示した。これらの結果から,11SがSPIよりも密度が高い凝集体を形成することが,硬いゲルを形成する理由と考えられた。
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