研究概要 |
環境汚染物質、農薬、食品容器の溶出成分などの合成化学物質が内分泌かく乱物質である可能性が指摘されている。その多くはエストロゲン様作用を示す。大豆などに含まれるイソフラボン類も同様な作用を示すため植物性エストロゲンと呼ばれる。 本研究は、エストロゲン様作用の検出系の卵巣摘出マウスの子宮肥大試験法を用い、ヒトの摂取量レベルの濃度のイソフラボン類を含む大豆食品が、内分泌かく乱作用を疑われる合成化学物質に対し、エストロゲン様作用に関して相互作用をもつか検討しようとするものである。 本年度は、大豆食品と合成化学物質それぞれの投与量の検討を行った。 大豆水抽出物の煮汁を作り凍結乾燥物を調製し、それに含まれるダイジン、グリシチン、ゲニスチン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステインをHPLCで分離定量し、総イソフラボン含量を求めた。大豆ミルクからの乳幼児のイソフラボンの摂取量(10mg/kg/day)に相当する量の総イソフラボンを含む煮汁凍結乾燥物の量を算出し、それを投与量とした(3000-6600mg/kg:凍結乾燥物の調製毎の違いによる)。 ホルモン剤ジエチルスチルベストロール(DES)、ポリカーボネートの原料ビスフェノールA(BPA)、農薬メトキシクロル(MX)について、DES 0.05mg/kg、BPA 300,600,900mg/kg、MX 50,100mg/kgを投与量とした。 6週齢のICR系雌性マウスの卵巣を摘出した。植物性エストロゲンを含まないAIN-76A精製飼料によって飼育下、14日間煮汁を、3日間DES、BPA、MXを、それぞれ連続経口投与し、子宮重量を測定した。 相対子宮重量(体重比)は、煮汁の14日間投与、DES 0.05mg/kg、BPA 300mg/kg以上、MX 50mg/kg以上の3日間投与で有意に増加した。
|