研究概要 |
本研究は試験管レベルで複数の評価系を用いて食品由来の抗酸化成分の活性評価を行い、化学構造と活性発現の関連性を明らかにすることを目的としている。ニクズク科のパプアナツメグ、パプアメース(Myristica argentea)から10種の低極性化合物を単離し、NMR, MS等による機器分析を行った結果、6種のdimethylbutane型、4種のtetrahydrofuran型のリグナンを構造決定した。DPPHラジカル捕捉活性、O_2^-ラジカル捕捉活性、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)法によるラジカル捕捉活性を測定ところ、DPPHラジカル捕捉活性、ORAC法によるラジカル捕捉活性に関しては、ともにフェノール性水酸基の数が多い方が強い活性を示したが、前者の測定法ではベンジル位が酸化されていない方の、後者では酸化されている方の活性が強い傾向にあった。O_2^-ラジカル捕捉活性についてはベンゼン環上の置換基の種類や骨格構造の間に一連の関連性は観察されなかった。フトモモ科の香辛料、サラムリーフ(Syzygium polyanthum)から5種の高極性化合物を単離し、機器分析によって2種のmyricetin配糖体と3種のエラージタンニンの構造を決定した。これらの単離化合物と以前に酢酸エチル可溶部から得たタンニン、フラボノイドをあわせて各種活性評価を行った。DPPHラジカル捕捉活性はフェノール性水酸基の数が多くなるほど強い活性を示した。O_2^-ジカル捕捉活性の場合は、同数のortho-trihydroxyphenyl構造(o-THP)を有する5種のタンニンの活性を比較すると、hexahydroxydiphenoyl基(HHDP基)の個数が多いほうが活性の強いことが判明した。また、ORAC法による結果では、3個以上のo-THPが分子内に存在する場合、ガロイル基やHHDP基の数が他の2法と異なりほとんど活性に影響を与えなかった。以上、3種の測定方法を用いてラジカル捕捉活性を測定したところ活性の強さは必ずしも一致せず、抗酸化性物質の活性は複数の方法によって総合的に評価すべきことが示唆された。
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