研究概要 |
食材に含まれるポリフェノール化合物の機能性の指標として,発がんプロモーション抑制活性を設定し,その性質が加熱調理によってどのような変動を受けるか,検討するための実験方法を確立し,加熱調理によって発がんプロモーション抑制作用がどのような変動を受けるか,予試験的な検討を行い,本格的な研究へ結びつけることが目的である。 <食材からの試験溶液の調製法>食材に含まれるポリフェノール化合物をできるだけ安定に,完全に抽出できること,ポリフェノール以外の化合物の混入をできる限り排除できること,の2点を念頭に調製法の検討を行い,食材を液体窒素下凍結し,室温に取り出して粉砕後,メタノールで抽出する方法を採用した。その後,Sephadex LH-20によるクリーンアップを行い,ポリフェノール画分を得た。<ポリフェノール化合物含有量の把握>試験溶液中に含まれるポリフェノール量の把握には,総量をFolin-Denis法で測定し,個別定量には,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または,HPLC-MS/MSを用いた。<発がんプロモーション抑制作用の検出>発がんプロモーション作用の検出や機序の検討に適した,マウス表皮由来JB6細胞系を用いて,試験溶液調製法で述べたポリフェノール画分の細胞毒性試験を行い,軟寒天コロニー形成試験の最高濃度を設定して,それ以下の適当な濃度2点を加えて,発がんプロモーション抑制試験を行った。TPA-陽性対照を100%として,ポリフェノール画分が抑制する程度を%表示し,IC_<50>(50%阻害濃度)を求め,これにより,抑制活性の強弱を比較した。 今回は,食材中の加熱調理によるポリフェノール量の変化と発がんプロモーション抑制活性について,ギンナン,ゴボウ,シソ,シュンギク,ダイズ,タマネギ,ナス,ブロッコリー,ホウレンソウ,レンコン,リンゴ,レーズンの12食材で検討し,予試験的な結果を得た。電子レンジ加熱の場合,総ポリフェノール量,個別ポリフェノール量ともに加熱により変わらない,減少,増加の場合が見られ,減少するとは限らないことが判明した。今後,食材の件数を増やしていくことで,生,煮る(茄でる),焼く,電子レンジ加熱などの調理法とがん予防効果との関係を示すガイドライン(指針)の提示することができると思われる。
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