マイタケに含まれる水抽出物は純系マウス由来の3T3-Ll細胞およびB2C1細胞だけでなくヒト皮下由来の培養細胞においてもトリグリセライドの蓄積を抑制した。動物培養細胞であるB2Cl細胞において、その分化抑制作用機序はCCAAT-enhancerbindingprotein(C/EBP)βおよびC/EBPδの発現を抑制することによるものであった。さらに、これらの因子が発現を誘導すると考えられている、PeroxisomeproliferatoractivatedreceptorsγおよびC/EBPαの発現をも抑制した。尚、これらの因子の発現抑制または非活性化はMAPKinaseシグナルによるものではなかった。さらに、脂肪細胞の分化を前駆脂肪細胞の分化ステージにとどめておくいわゆるゲートキーパーの役割をはたすβ-カテニンの蓄積は見られなかった。さらに、骨格筋および脂肪細胞にのみ発現する糖の輸送担体であるGLUT4の発現も抑制していた。脂肪細胞分化課程後期に活性化するGPDは活性は抑制された。成熟した脂肪細胞から分泌されるレブチンの分泌量が減少していた。 一方、ヒト皮下由来の白色脂肪細胞では、マイタケ水抽出物によってトリグリセライドの蓄積および、脂肪合成のkeyenzymeであるGPDH活性の抑制がみられた。 そして脂肪細胞分化のマスターレギュレーターとされる核内転写因子PPARγ及びC/EBPファミリーの発現を抑制しており、マイタケ水抽出物による脂肪細胞分化抑制効果は動物細胞だけでなくヒト由来の細胞でも同様の作用機序を示すことから人体への応用が期待できる結果を得た。 生理活性物質の精製は、極性が強いのでODSC18および水系で使用できる逆相クロマトグラフィーカラムを使用し、精製を繰り返している。この生理活性物質の構造決定についてはLC-MS、 TOF-MSおよびNMRをもちいて、現在検討中である。
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