炊飯後の米飯は、糊化温度以下で保存すると米飯中の澱粉が老化して、アミラーゼによる酵素分解に対して抵抗性を示す。この老化による澱粉の消化性低下は、災害時の救援食では消化能力の低い老人・子供・病弱者等の消化不良をもたらし、平常時では難消化性澱粉供給源として腸内環境改善の効果が期待される。米飯炊飯後の老化進行の制御と難消化性澱粉生成の制御は重要であると考え、米飯炊飯後の食味低下に関係する初期老化の評価と難消化性澱粉について研究を行った。米飯炊飯後、水分、塩濃度、保存温度、油脂濃度を変えて、米飯物性、白色度、澱粉糊化度、Englystら方法による難消化性澱粉含量を測定したが、官能的な老化の進行による食味低下に比べ、各指標の変化は小さく初期老化の測定指標として不適であることがわかった。しかし、炊飯後5℃24時間保存し凍結乾燥した老化米飯をラットに投与した結果、腸内菌叢の菌群レベルにおける顕著な構成の変化は認められなかったが、盲腸内澱粉量が増加、酢酸・プロピオン酸、酪酸などの短鎖有機酸濃度が増加し、小腸での消化を逃れて盲腸に達する澱粉の存在が示唆され、盲腸内細菌の糖質源となっていることがわかった。腸内細菌は、恒常的に糖質の少ない環境で常在しており、今回の結果から老化米飯中の老化によって生成する難消化性澱粉演腸内細菌の適当な糖質源になることが確認され、腸内細菌叢の構成や代謝産物である短鎖脂肪酸による整腸効果が期待できることがわかった。
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