研究概要 |
本研究は図形領域における小学校算数科と中学校数学科の連続性を考慮した指導方法を確立することを目指している。これまでに,申請者は図形の概念形成を促進するために,図形に関する諸概念の関係についての理解の状態を捉える枠組みを設定し,それに基づいて,理解の状態3から状態4への移行には小学校及び中学校における定義指導が重要であることを明らかにしてきた。そこで,本研究では,既に理論的に抽出されている理解の状態間の移行を促す要因を踏まえて,小学校算数科と中学校数学科における連続性を考慮した図形の定義に関する指導方法を提案した。 そのために,以下の4つの方法を用いた。(1)図形の定義に関する児童、生徒の実態調査の実施,(2)児童、生徒の実態を踏まえて,理論的に抽出されている要因を生かした授業の構想(3)構想した授業の実施及びその効果検証,(4)その結果を基に,図形領域における小学校算数科と中学校数学科の連続性を考慮した指導方法の提案。 図形の分類及び定義に関する質問紙調査の結果から,図形の定義に関する実験授業の効果が明らかになった。これは生徒と共に定義を構成していく活動及びファンヒーレの7ピース、モザイク、パズルを用いて構成した図形がどのような性質をもつかをその図形の定義を基に確かめる活動による指導の効果であると判断できる。 以上を踏まえ,図形領域における小学校算数科及び中学校数学科の連続性を考慮した指導方法の留意点として,以下のことを提案した。(1)定義の意味する内容とそれを満たす集合とを対比させる活動を取り入れること,(2)図形の定義構成の活動を取り入れること,(3)図形の定義を活用してその図形であることを確認する活動を取り入れること,(4)図形の定義の特徴を踏まえて指導を行うこと,(5)図形を常に関係づけて捉えるようにすること。
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