平成19年度の研究実績は、海外の科学系博物館の質の高いコミュニケーションの現場を取材し、体験学習のあり方の調査・分析を行った。特に、体験ミュージアムの代表とされるサンフランシスコのエクスプロラトリウムでは、工房の担当者やデザイン、プランナーたちにインタヴューをし、舞台裏の仕掛けや将来の方向性を取材できた。イギリス(ケンブリッジ、ロンドン自然史博物館、科学博物館等)、アメリカ(アトランタ、セントルイス、ワシントンDC)、オーストリア(ウィーン自然史博物館、地球儀博物館、ヴェヴェー食物博物館等)、スイス(ベルン自然史博物館、アインシュタイン博物館等)と科学系博物館の主たる動きと体験型アミューズメント性の方法論を掴めたことで、一層日本の博物館のあり方の欠点と独自性が見えてきた。国内では国立科学博物館、旭山動物園、北九州市立いのちのたび博物館・翼竜展、北九州マリンワールド、上野動物園、医の博物館(新潟)、交通博物館、その他多くの個人博物館の取組みを取材した。また、昨年同様に青年のための科学の祭典(科学技術館)に学生を送り込み芸術と科学の融合のための理解増進を強めた。サイエンスアゴラ2007(JST主催)の委員となり企画参加を日芸全体で3日間行った。九州大学博物館でワークショップ。科学の智プロジェクト広報部会で委員を担当し、科学リテラシーの向上と理解増進のための報告書までこぎつけた。外部からのサイエンスライターやジャーナリスト、サイエンティストら23名で構成しているオムニバス形式の日芸総合講座"サイエンスコミュニケーション"では、3年目の可能性を4年目につなげることができた。自らの多くの実験の結果と分析から、理科離れ、芸術と科学の融合、科学教育や科学技術への理解増進という、キーワードにどれだけの提案と貢献ができるかがやっと見えてきた。欧米の博物館の試みは常に先駆的、発展的で問題意識に向かってその改善にうらやましいほど早く応えることに心がけているのは脅威であった。
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