研究概要 |
本研究は,将来の科学技術の発展を担うべき我が国の子どもたちの「理科離れ」や「学習意欲の低下」を克服する一手段として,初等・中等理科教育カリキュラムの中で,子どもたちに身近な自然事象を取り上げ,子どもたちの「知的好奇心」や「科学的思想」を引き出す学習支援システムを開発することを目的としている。 平成18年度は,平成17年度に引き続き,研究協力校を対象に,新たに2つの理科単元における実践授業を実施した。研究組織として,理科教育の研究者(清水)が科学的カリキュラムを開発し,認知心理学の研究者(高垣,田爪)が学習ツールの開発,及び科学的知識を構築していく過程の数量的かつ質的分析を行った。本研究は,理科教育と教育心理学の学問領域を理論的背景とした「学際的研究(interdisciplinary study)」の視座から検討を行う点に特徴がある。研究は三者の協議の基に進め,この協議会の下に研究協力校を位置づけた。 子どもたちに現実世界の事象の振る舞いを理解させるために,単に観察・実験を行うだけではなく,対象となる自然事象の『仮説モデル』を自ら生成し,修正し,再構成する過程をモニタリングできる学習ツール(振り子センサー,電子黒板等を使った授業)を作成・導入し,学習状況を実感しながら理解させていく教授法を考案した。さらに,子どもの実態を熟知している現職教員を研究協力者として加え,学習ツールは子どもの理解の促進に有効か,指導内容との統合性が図られているか否かに関して検討してもらった。検討の結果に基づき再度学習ツールを改良した上で,小学校5年生を対象に,理科単元「ものの溶け方」及び「おもりの動きと働き」の2つの理科単元の授業を実施し,実証的検討を行った。研究授業の結果,考案した教授法及び作成した学習ツールは,子どもたちの知的好奇心を引き出し,自らの学習状況を実感しながら,自然事象の理解を深化していく効果があることが確認された。
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