点字あるいは点図で微生物の形態を知ることは、消毒効果の判定と評価にも重要である。そこで今回は実践教育をより実行するために交差伝達性を中心に微生物学教育を行った。医療従事者として感染対策を確立する上で、各種消毒薬に対する消毒効果を知り、各個人から分離した黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の交差伝達性を検討した。既に鼻前庭から分離した黄色ブドウ球菌では手指から分離した菌株と莢膜血清型が一致したことは報告した。 今回検討した交差伝達性では施術者から被施術者への伝達を見たところ、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌では酵素標識免疫定量法による型別で、莢膜血清型II型株での交差伝達性がみられた。この株のメチシリン感受性パターンは交差伝達した菌株間で一致していた。また、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)保有者は手指の未消毒の場合には被施術者への交差伝達することが認められた。MRSA株はラテックス凝集法の検出キットにより耐性因子のPBP2Aを保有していた。本検出キットはPCR法によるmecA 遺伝子の保有と一致している。 全盲学生が微生物を形態学的、血清型、遺伝子レベルでの薬剤耐性までの一連の過程を知ることが出来たことは微生物を理解するうえで大きかった。将来医療従事者としての心構えと、感染予防対策を実践し、これらのイメージによって微生物学の一般的な知識をより習得する上で、点字ジャーナル雑誌に最新の感染症情報を提供している。本雑誌は点字と墨字があるので全盲学生、弱視学生の講義にも活用し理解力を高めている。更に、点字ジャーナルは主に視覚障害の教育者・医療従事者のための雑誌で、この分野の読者にも微生物学の教育が実践できたものと考えられる。
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