研究概要 |
LD児では,ワーキングメモリの困難が指摘されてきた。本年度は,近赤外線分光法(NIRS法)で用いるワーキングメモリの評価課題を開発した。ワーキングメモリ課題としては、言語メモリ課題をとりあげ、順唱課題を用いた。成人では、3桁、5桁、7桁の条件とした。小児では、3桁条件とした。 成人では、3桁条件において、左と右の上・中前頭回ではdeoxyHb濃度変化が増加せず、下前頭回でdeoxyHb濃度変化の増加が生じた。5桁条件と7桁条件でも、上・中前頭回ではdeoxyHb濃度変化が増加せず、左と右の下前頭回でdeoxyHb濃度変化の増加が生じた。特に7桁条件では、右でdeoxyHb濃度変化の増加部位が、左と比べて中前頭回を含む広い範囲になった。これより成人においては、音声数詞の保持において、左右の下前頭回は明瞭な賦活を示し、負荷の増加に伴って、右の中前頭回を含む活動になったことが指摘できる。 小児において、3桁条件の左と右の上・中前頭回ではdeoxyHb濃度変化が増加せず、下前頭回でdeoxyHb濃度変化の増加が生じる傾向をしめしたのは、小学5年生と6年生であった。小学4年生以下では、左右前頭前野でdeoxyHb濃度変化が減少または増加する傾向にあり、部位に限局した特徴は認められず、これは小学5年生と6年生の特徴と異なった。これより、3桁条件での賦活について、基本的な特徴が成人の段階に達するのは、小学5年生以降であることが推測された。
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