研究概要 |
本研究では,音声内容を単語,文などのパターンに分けて既存の音声合成エンジンによる合成音声を評価し,その音声を利用したリスニング学習について調査を行って合成音声の外国語教育利用への可能性を探った.初年度は英単語・文に対して評価,分析を行った.評価実験には,合成音声と自然音声をともに用いた.評価文は単語の発音特徴,"一般的な英単語","摩擦音を含む英単語"及び"母音分類に基づいた英単語・文"の3種類を含む内容から構成される.学習者の合成音声評価は全体的に自然音声に及ばなかったが,自然音声と同様に利用できる単語群があることを明らかにした.その特徴としては,より長い音節の単語または短母音/* /,/* /と/* /,長母音/i:/,/u:/と/*:r/及び二重母音/a*/,/**/を含む単語の合成音声は比較的高く評価される傾向が見られた.摩擦音においては,種類によって評価が分かれ,英文が英単語より聞き取りやすい傾向があることも判明した.最終年度では,合成音声によるリスニング訓練の効果を調べたほか,評価実験を英語教師に対しても実施した.リスニング訓練効果の調査はプレテスト(自然音声のみ),トレーニング(合成音声のみ),ポストテスト(自然音声のみ)という3つのステップから構成され,英語と中国語において実施した.結果としては,合成音声を用いたトレーニングにより,リスニング能力の改善がどちらの外国語にも見られた.教師による評価は,学習者評価と一致するところがある一方,合成音声と自然音声において有意差がないことも明らかにした.現段階においては合成音声の外国語教育への選択的利用は可能であり,合成音声を利用したリスニング学習は学習者のリスニング能力向上に有効と言えよう.また合成音声の授業利用形態に関連して,コミュニケーションツールやRFIDタグなどの授業利用についての研究も行った.
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