研究概要 |
本申請研究では,(a)作問を小学校低学年でも行えるように単純化されており,かつ(b)作問の学習効果を失わない作問形態として,「与えられた単文群から適当なものを取捨選択し,適切に組み合わせることによる作問」を考案し,この作問形態を対象とした作問学習支援システムを設計・開発することを目指している.本年度では,単文統合としての作問が可能な作問学習支援システムのプロトタイプが実現されている. 本システムでは,学習者はあらかじめ計算式を与えられており,その計算式で解決できる問題を作成することが課題となる.さらに,学習者は複数の空欄を持つ問題テンプレートと,その空欄に当てはまる候補となる単文群が提供される.事前に与えられる数式の種類,空欄の数,および単文の数と質は,システムによって学習者のレベルに応じて制御されることになる.学習者は,目標となっている計算式と,与えられている単文群を参照しながら,適切な単文を適切な空欄に挿入することで,問題を完成する.この作問形態を,算数の文章題の問題解決過程における問題理解段階のモデルとして広く受け入れられている「変換-統合モデル」に対応付けると,命題集合の中から適当なものを取捨選択し,適切に組み合わせるといった形の作業を行っていることになり,統合段階に焦点を当てた作業になっている.これに対して,申請者がこれまでに実現してきた概念の組み合わせとしての作問形態では,命題を学習者自身が作成する過程が含まれていたことになる.この過程は変換-統合モデルにおいては変換段階と位置づけることができ,問題解決における不可欠な過程であるといえるが,算数の学習としての意義は統合段階に比べて十分に小さいといえる.
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