ブロードバンドの普及により、企業内研修はもちろんのこと、各家庭での学習、さらには高等教育においてもe-Learningが急速に普及してきた。しかし、一方では従来型のe-Learningの手法ではモチベーションの低下によって学習を継続する事が困難であることが指摘されている。そこで、本研究ではe-Learning、特にWebを用いた、いわゆるWBT(Web Based Training)において、教材コンテンツの配信を一方通行ではなく、学習者の状況に応じて変化させることに主眼をおき、受講者の状況把握を行うための受講者観察システムの構築を行っている。このシステムにおいては、受講者の学習内容に依存しない眼球運動に着目し、特にSaccadeと呼ばれる眼球の断続的な高速跳躍運動の検出を行う事で、学習への集中度を検出する。Saccade現象の有無については、学習への集中度に応じて変化があることがすでに分かっておりこれを検出することで、学習者の状況を把握する。しかし、Saccade現象はわずか30msecの瞬間に起こるため、これを通常のビデオカメラで検出するには、いわゆるビデオレート(1/30秒)、すなわち一コマあたり33msec以内にSaccade検出の計算を終える必要がある。本研究のアルゴリズム開発はすでに2002年より行われているが、ビデオレートでの処理が実現していなかった。そこで今年度はこの処理時間を短縮するためにアルゴリズムの改良を行い、過去の研究と比較して約十分の一の計算時間でSaccadeの検出を行う事を可能とした。
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