本研究の目的は、多肢選択式・穴埋め式・自由記述式等、性格や採点方法の異なるテストについて、教師や学習者で共有できる評価基準を明確にすることにある。そこで本研究においては、全ての出題形式のテストの学力評価を、知識の"広さ"を示す知識量と知識の"深さ"を示す理解度という2つのパラメータを用いて行うものとし、テストの解答から知識量・理解度・学習達成度を計算する学力評価モデルを定義した。多肢選択式問題については偶然の正答による加点の排除、穴埋め式問題については異なる観点からの出題による深い理解のチェック、自由記述式問題については文章中のキーワードや関連語句の登場頻度に基づいたモデルを構築したことが特徴である。これにより、出題形式で異なる評価結果の解釈の差異が吸収され、学習者や教員はテストの出題形式に依らない学力評価結果を得ることができる。特にe-Learningのような学習環境においては、教員が不在のケースも多々想定されるため、学習者が学力を自身で正確に判定できることが重要であり、本研究でそのための一方法を提案できた意義は大きい。また、多肢選択式問題の学力評価モデルをMoodleを用いて実装し、初級システムアドミニストレータ試験を対象としたシステム評価を行った。利用者は不特定多数の約200人で、アクセスログを解析することにより評価を行った。その結果、多肢選択式問題の特徴である偶然の正答による加点をある程度排除でき、本評価モデルによる学力評価の有効性を示すことができた。
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