戦時下の科学論・技術論に関する新資料の発掘を集中的に試み、それらも含めた当時の諸議論を網羅することが本研究の目的であるが、優先的に発見を試みていた資料である「唯研ニュース」『ダイヂェスト』『科学評論』について、今年度は新たに発見できたものはなかった。国内の大学図書館等の個人文庫6ヶ所を調査し、また当時の関係者1名にインタビュー調査を行なったが、上記のものについて新しい資料の手がかりは得られなかった。ただし、これらの調査によって、戦時下の科学啓蒙書について貴重な手がかりが得られ、「生活科学新書」や「国民科学新書」以外にも多数存在したことが明らかになり、それらのほとんどを収集することができた。収集したのは、「科学の泉」や「少国民のために」など10シリーズについて、約120冊である。昨年度の成果の一部をまとめた「戸坂潤の『全集』未収録文献22編の発見」が『科学史研究』に掲載されたが、その後新たに1編の未収録文献を発見することができた。また、これまでに収集した資料について、主にまだ「総目次」が公刊されていない雑誌について、その「総目次」の作成作業を進め、半分程度を完成させることができた。これらの資料の一部を用いて、日本理科教育学会四国支部大会において「『実験』の意味と理科教育における役割について」を報告した。また、日本科学史学会において「戦時下日本の『生活科学』」を報告することになっている。
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