研究課題/領域番号 |
17500683
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研究機関 | 金沢美術工芸大学 |
研究代表者 |
柳橋 眞 金沢美術工芸大学, 美術工芸研究科, 教授 (10230195)
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研究分担者 |
寺田 栄次郎 金沢美術工芸大学, 共通造形センター, 教授 (80180082)
山崎 達文 金沢学院大学, 美術文化学部, 教授 (30329429)
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キーワード | 金箔 / 製箔技術 / 箔打紙 / 箔業用字便覧 / 越野佐太郎 |
研究概要 |
解読を終了した、明治9年成立の稿本、越野佐太郎『箔業用字便覧』には、約340種類におよぶ、製箔技術、諸道具・設備、箔製品全般にわたる呼称が記載される。この箔業用字は、明治初頭に金沢で行われていた、金箔製造現場の実態を示す。江戸時代後期から近代初期にかけて顕著な興隆を見、以降、日本における箔業を独占して今日に至った金沢の製箔業の祖形を、本史料の活用によって読み取り、明らかにすることが本研究目的の主眼である。このために、今日行われている金箔製造の実態について、3軒のみ存続している箔打紙製紙家の紙漉き全工程を含め、箔打師による製箔に関するすべての工程について、映像記録化した。 また、『箔業用字便覧』に記載される近代初頭の用字例と、今日、箔業界で使われている製箔用語との比較検討を、京都ならびに複数の金沢の箔打師ほか箔業従事者の協力を得て行った。その結果、工程全般に渡り、現行の業界用語とほぼ変らない呼称、用字は多く、機械打ちの始まった大正期以降、手打ちによる箔打ちが完全に廃れて後も、製箔は、近世来の工程をほぼ踏襲することによって現在に継続されてきたことが明らかになった。しかし一方では、長く製箔業に従事してきた業界人にあっても、意味を解せない用語や語句があり、そのなかでも、特に、延ばされていく過程や仕上がり箔の状態を、感覚的に示していると思しい用字は、前近代における金箔製造の理想や、その性状、品質がどのように評価されるものであったかを知るための糸口となると考えられる。このことは、本研究期間内では明らかにできなかった。向後の研究課題である。 なおこれら本研究をもって、北國新聞社出版局編『日本の金箔は99%が金沢産』時鐘舎(2006.12)の発刊に協力し、その成果の一部を同書中に反映させた。
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