研究概要 |
本年度は、夏にニューヨークのロックフェラー財団資料センター(Rockefeller Archive Center)にて、本研究課題に関連する資料の調査をおこなった。その結果、1930年代末に財団が財団内部のどのような過程を経て、カリフォルニア大学放射線研究所の184インチ・サイクロトロン計画に対し1,150,000ドルの援助決定をしたか、明らかにすることができた(詳細は、『科学史研究』投稿中の論文「ロックフェラー財団による184インチのサイクロトロン計画への援助決定過程」を参照のこと)。 財団は、単に援助申請者の計画にしたがって、その巨額な援助を決定したのではない。特に、財団の自然科学部部長を務めていたWarren Weaverによれば、財団は計画を"買う"という。それもどのような計画でも良いのではなく、財団自身が構想をもって、深く関与して作成したより望ましい計画を、"買う"と。つまり、財団には財団の科学政策があって、あるいは科学政策を創りながら、その実現を期して資金援助をおこなっていたと考えられる。その意味で、ロックフェラー財団の科学政策の解明は、20世紀アメリカ科学史を解明する1つの重要な論点となる、と確信した。 さらに、この春には、ボストンのハーバード大学アーカイブスにて、ハーバード大学のサイクロトロン開発について調査した。その結果、財団からの援助の有無について不確かであった点を、明らかにすることができた。ハーバード・サイクロトロンについては、財団からの援助は無かった。ハーバード・サイクロトロンに関しては、現在、収集資料の解析を急いでいるところである。その中間報告は、2006年度日本科学史学会年会で口頭発表をする予定である。
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