研究課題
基盤研究(C)
本研究は、1930年代のサイクロトロン開発において、その発明地アメリカのカリフォルニア大学放射線研究所をはじめとして、フランス、デンマークなどヨーロッパのサイクロトロン開発にも資金援助をしてきたロックフェラー財団の、その援助目的を明らかにすることを目指しました。3年間の研究の結果はつぎの通りです。1.ロックフェラー財団は、独自の科学研究政策をもって、サイクロトロン開発に資金援助をしました。その政策とは、ロックフェラー財団の自然科学部長であったWarren Weaverが1933年から推進した実験生物学の振興です。ちなみに、実験生物学とは「有機体の研究や生命体の物質の反応に対する、実験的方法の適用」と定義されています。Warren Weaverの関心は、「いかにしてより有効に、化学や物理学のディシプリンを生物学にもたらすか」ということでした。そこで有望視された研究方法のひとつが、放射性指示薬技法(放射性トレーサー技法)です。サイクロトロンは、この研究方法と関連して、さまざまな人工放射性同位元素の生成手段として注目されました。こうした経緯で、1930年代のサイクロトロン開発はロックフェラー財団によって資金援助されたのです。2.ロックフェラー財団は、あくまで独自の方針に基づいて資金援助をしています。ハーバード大学の例に見られるように、原子核研究のためのサイクロトロン開発には資金援助を拒否しています。しかし一方で1940年春には、カリフォルニア大学における184インチ・サイクロトロンの建設計画に、100万ドルを超える資金援助を決定しました。これは、物質構造研究の最前線の課題である中間子の人工生成を目指す計画でした。ロックフェラー財団は、その計画立案から深く関与して援助を決定し、このビッグ・プロジェクトを開始したのです。この184インチの巨大電磁石は、アメリカの原爆開発に組み込まれ、ウラン爆弾の原料生産法の開発に使用されました。
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科学史研究 Vol.46,No.244
ページ: 241-252
KAGAKUSI KENKYU(Journal of History of Science, Japan) Vol. 46, No. 244
科学史研究 Vol.45,No.238
ページ: 81-91
KAGAKUSI KENKYU(Journal of History of Science, Japan) Vol. 45, No. 238
http://archive.rockefeller.edu/publications/resrep/pdf/hinokawa.pdf