イノベーション(技術革新)に関する経営学者たちの最近の理論的研究--例えば、James M.Utterbackのドミナント・デザイン論、Clayton M.ChristensenのValue Network論、Giovanni Dosiの技術パラダイム論など--において様々な技術の歴史的発達プロセスが事例研究として取り上げられていることに示されているように、最近の技術経営論(Management of Technology)においては、イノベーションの歴史的構造の解明が一つの焦点となっている。 本研究の目的は、そうした現代的課題に応え、マイクロプロセッサー(CPU)の開発とパーソナル・コンピュータ技術の歴史的発展が相互に関連しあいながらどのように歴史的に発展してきたのかというプロセスを技術史的視点および技術論的視点から実証的に分析することを通じて、イノベーション(技術革新)の歴史的構造を解明することにある。 そうした視点から平成18年度においては、インテルにおけるマイクロプロセッサー開発の歴史的展開(具体的には1978年の8086、1979年の8088、1982年の80286、1985年の80386DX、1989年の80486DXといった製品開発の流れ)、および、モトローラにおけるマイクロプロセッサー開発の歴史的展開(1979年のMC68000、1979年のMC68000、1982年のMC68020、1987年のMC68030といった製品開発の流れ)と、1980年代におけるIBM社のPC、IBM互換機、およびAppleのパソコン製品開発との技術的連関に焦点を当てながら、マイクロプロセッサーの技術的発展プロセスとパーソナル・コンピュータ技術の歴史的発展プロセスの相互連関に関するダイナミズムの解明を、技術史=技術論的視点から実証的に分析した。
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