研究課題
基盤研究(C)
本研究の研究期間は四年間であり、実施計画は、1・現状調査、2・図様の復元、3・材料・制作技法の解明、4・色彩の復元、5・復元模写の制作、6・研究成果の発表である。一年目の平成17年度は「1」に重点を置き、「2」、「3」の準備を行った。現地(平等院)での現状調査は、図様や制作技法の目視による観察と、大型フィルム(8×10)やデジタルカメラなどによる撮影、赤外線撮影を行った。赤外線撮影は研究対象作品が大画面であるため場面を区切って撮影し、デジタル加工することで一枚にまとめあげた。これらの画像資料は研究対象作品の現状を伝える貴重な資料でもある。図様の復元には制作当初の図様とそれ以外のものとの識別や、現状では不鮮明な作品全体の構図、何が描かれているかなどの問題点を明確にする必要があり、現状の図様をより綿密に確認することが不可欠である。そこで大型フィルムから研究対象作品と同寸のカラー写真を現像し、全図様及び剥落跡を和紙に墨などを用いて上げ写しを行った。その際、目視では確認が困難な箇所は赤外線写真やデジタル処理を施した拡大写真を参考にした。これと平行して、客観性のある資料であり、復元の有力な手掛かりと考えられる京都市立芸術大学所蔵「土佐派粉本」の調査を行った。これらの調査からはこれまで明らかにされていなかった図様を確認した。材料・制作技法の解明に関して、使用されている絵具の推定のために蛍光X線分析を行った。これは研究対象作品では初めての試みである。測定では同年代の類似作品に使用されている絵具とほぼ同様の材料が使用されていると考えられるが、さらに詳しい解析を行っている。また、色調を考察するため研究対象作品と同年の制作であり、特殊な環境で保存されていたため当時の色調をよく止める平等院所蔵「月輪」の調査を色合わせを含めて行った。