研究課題
平成19年11月に平等院、独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所と共同で研究対象作品の高精細デジタル撮影を行った。この調査は大変重要な調査であると共に平等院鳳凰堂内に大量の調査用精密機材や資材を搬入する必要があるため入念な打ち合わせが必要であった。調査は無事終了し、ここで得られた現状カラー画像、赤外線画像、蛍光画像は研究対象作品の現状を詳細に伝える貴重な資料といえる。これら画像の解析をこれまでの研究成果と照らし合わせながら進めるなかで再検討の必要性があると考えられる事項が確認された。まず図様に関してでは目視の観察やこれまでの簡易的な赤外線撮影画像では確認できなかった箇所に何点か描線を確認した。また、筆致の特徴がより明確に理解できることから制作当初の図様とそれ以外のものとの識別においてこれまでの考察をより深めることが可能となり、この再検討の結果からより信頼性の高い成果を提示できるものと考えられる。色彩に関してでは蛍光画像の解析から使用されたと考えられる染料系絵具の考察がより深まり、多くの視点からさらなる検討を必要とすることが明らかとなった。このことから研究対象作品以外の鳳凰堂内壁扉とは異なる特異な色彩を呈していた可能性があるものと思われ、染料と染料系絵具の調査を進めている。これらと平行して基底材の加工とこれに彩色し模写を仕上げるための材料の検討、制作技法に関しての試験なども進めている。