研究課題
東京文化財研究所が中心となって近年開発した可搬型の蛍光X線分析装置などを用いて、様々な彩色文化財の材質調査を行い、彩色材料や技法に関して数多くの新たな知見を得た。以下に今年度の成果の概要を示す。(1)「春日権現験記絵巻」の調査宮内庁三の丸尚蔵館に所蔵される全20巻から成る絵巻物である。修復が行われるのに合わせて、彩色材料の調査をポータブル蛍光X線分析装置により行った。今年度は、第六巻の表・裏面、および第十六巻の表面彩色の調査を実施した。緑色部分で2種類の顔料が使い分けられていることなど、用いられている材料・技術について多くの情報を蓄積することができた。(2)染織品に用いられる金銀刺繍糸の調査京都国立博物館に所蔵される染織品について、装飾として用いられている金銀刺繍糸の材質をポータブル蛍光X線分析装置により調査した。江戸時代に製作された小袖8領について調査したところ、金色糸部分から金とともに鉛が検出される材料が複数見出された。鉛の由来は現在のところ突き止められていない。また、銀色糸として錫箔が使われている資料も複数見出された。(3)金銅製品の調査仏像、仏具などには銅あるいは青銅の地金の上に鍍金を施した金銅製品が数多く見られる。蛍光X線分析装置で金銅製品を分析すると、地金、鍍金層の材料組成とともに、鍍金層の厚みも同時に測定することができる。各地の寺院に所蔵される金銅製の仏像、仏具について、調査を行い、その材料組成を明らかにした。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件)
検査技術 12・1
ページ: 42-46